アップライトピアノのタッチに重要な部品
「フレンジコード」はアップライトピアノだけについている部品です。
ハンマーごとに1本、ピアノ1台では88本張ってある細い紐です。
「バットスプリング」というバネとセットで、このバネを引っ掛けるための輪っかとしての役割です。バットスプリングがバネとしてはたらくことで、弦を叩いたあとのハンマーが元の位置に戻る助けをしています。
白い紐がフレンジコード、引っ掛けてる細いバネがバットスプリングです
当時のフレンジコードは素材が弱く、経年劣化で茶色く変色し粉のようにボロボロになり切れてしまいます。 切れるかどうかは使用頻度や置き場所にはあまり関係ありません。
該当の年代でも全く切れる気配がないピアノもあったりで、当時の製造工場では質の異なった部品が混在していたのではないかと思います。
切れるとどんな問題が起こるか
フレンジコードが切れると、バットスプリングが全く意味の無い状態となります。
そしてバネの助けが無くなるとタッチに色々な問題が起こります。
・連打がしづらくなる
ハンマーが元の位置に戻るのが遅くなり、連打がしづらくなったりハンマーが2度打ちしたりします。
・タッチがあいまいになる
バネの抵抗感が無いフワフワしたタッチになります。
・雑音がする
飛び出たスプリングが他の部品に当たり、カシャカシャと雑音がすることがあります。
・音が出ないことがある
飛び出たスプリングが他の部品に当たるとハンマーが跳ね返され、音が出ないことがあります。
切れていることがわかったら
数本でも切れはじめたピアノは他のフレンジコードが切れるのも時間の問題です。
88本全てを取り除き、新しいフレンジコードに貼り替えます。
張り替える頻度は?
頑丈なフレンジコードに張り替えますので、一度張り替えればその後は基本的に切れる心配はありません。
そのピアノで一生に1回だけの修理となります。
フレンジコードが切れるピアノは良くないピアノ?
問題なのはフレンジコードだけですので、他の部品の質が悪かったり造りが甘かったりするわけではありません。
中古ピアノを選ぶ際も、フレンジコードが張り替えられていることはむしろ今後切れる心配が無いと言うメリットしかありませんので、選定する基準としては無視してしまって大丈夫です。
フレンジコードが切れている可能性の高いピアノ
1968年〜1986年製造
製造番号 700,000〜4,210,000番台
機種名
U1E、U3E、U1F、U2F、U3F、U1G、U2G、U3G、U1H、U2H、U3H
U1M、U2M、U3M、U1A、U2A、U3A
UX、YUX、YUS、UX1,UX2、UX3、W102B
まとめ
フレンジコードが切れていても問題に気づかないこともあります。
しかし実は弾き心地はかなり悪くなっています。思い通りに弾けないだけでなく手を痛めたり、スプリングが折れてしまうなど余計な修理が必要になってしまうので早めの修理が必要です。
車に例えると「車検が通らない」レベルの故障です。