
梅雨時期はもちろん、湿度の高い地域や地下室などのピアノにも
梅雨が嫌いなのはピアノも同じ
元々ヨーロッパで生まれたピアノは日本の四季の変化には弱く、5月頃からの多湿の季節にはいろいろな不具合が出てきます。
木やフェルトが膨らむので鍵盤が重くなったり、急に音が出なくなることもあります。こまかいたくさんの部品がギリギリのサイズで組み合わさっているので、湿度がちょっと上がっただけでもガクッと調子を崩します。また、ピアノ本体の歪みが大きくなり極端な音の狂い方をすることも。
この時期にもピアノに負担をかけず快適に弾くための唯一にして最大の対策は、除湿機をつかうことです。
除湿機の種類
除湿機にはコンプレッサー式とデシカント式の2つのタイプがあります。
ピアノに必要な「部屋の湿度調整のため」にはコンプレッサー式がおすすめです。使用するのが梅雨から夏にかけての気温が高い時期なことと、一定に保つために長時間使用しますので消費電力が小さいのもメリットです。デシカント式ほど室温が上がりませんので快適な温度でピアノを弾くことができます。
コンプレッサー式 | デシカント式 | |
原理 | コンプレッサーを通して冷媒を循環させる エアコンの“ドライ”と同様の方式 |
乾燥剤により除湿、ヒーターで水に変換 |
季節 | 気温が高い場合に有効(梅雨〜夏) | 気温が低くても使える(1年を通して) |
室温 | 上がりづらい(1℃〜2℃) | 上がりやすい(3℃〜8℃) |
サイズ | 大きめ | 小さめ |
運転音 | 大きめ | 小さめ |
消費電力 | 低め | 高め |

特に防音室などの密閉された狭い空間でデシカント式を使うと我慢できないほど暑くなることも。
どれを買えばいいのか
ピアノ用として除湿機を選ぶときに大事なのは湿度の設定ができることです。
世の中の除湿機はそもそも「部屋の湿度を一定に保つ」ことではなく「部屋干しの衣類を乾かす」用に作られています。早く乾かすためにどんどん湿度を下げますので「湿度何%に保ちたい」という要望には応えてくれません。ピアノはとにかく乾燥させればいいというわけではなく、最適な温湿度(温度約23℃/湿度約50%)があります。

湿度設定ができるものはあまり多くはないので選ぶのは逆に楽です。
リビングなど広い空間には・・・

和室19畳/洋室39畳までOK
タンクが大きい
運転音が静か
1ヶ月の電気代の目安:最大約6,700円(常にフルパワーで運転しないので、実際にはこれより安くなります)
※毎年新モデルが出ていますが、モデル名とパネルの色などの変更のみのため、以前のモデルP-180SX(2021年モデル)P-180RX(2020年モデル)の在庫があれば安価に購入できる場合もあります。
6畳の個室などには・・・

和室6畳/洋室13畳までOK
価格が安い
消費電力が少ない
1ヶ月の電気代の目安:最大約2,800円(常にフルパワーで運転しないので、実際にはこれより安くなります)
※切り忘れ防止機能で24時間で一旦運転が停止しますので、水を捨てる際などに一度電源オンオフをする必要があります。
効果的な使い方
ピアノにとっては湿度の差が大きいことも負担になります。理想は常に一定の湿度になることですので、50%か60%に設定をして24時間運転をしておけばあとは勝手に一定に保ってくれます。タンクがいっぱいになり運転が止まると急激に湿度が上がって逆効果になってしまうので、寝る前や長時間のお出かけの際はなるべく水を捨てるようにすると安心です。
そもそもの話...
エアコンの除湿ではダメ?
エアコンは基本的に温度重視のため除湿力は足りず、設定温度を相当下げないと理想的な湿度までは下がりません。

結局ピアノ用には専用の除湿機が必要です。
エアコンの除湿についてはnoteにくわしく書いています。
修理の前に環境づくりから
動きが悪かったり鍵盤が重かったりするピアノも、修理をする前に除湿機を置いただけで改善するケースも多々あります。
まずは環境を整えた上で修理や調整をしていくことで、そのピアノに本当に必要な修理や調整ができます。結果的に費用も抑えられ、ピアノにも負担が少なく済みます。

人にもピアノにもやさしく!