2015/07/01


ピアノ調律の際に勧められる「乾燥剤」
調律師によっても入れる派・入れない派分かれますが真相は??

そもそも乾燥剤の中身は

ピアノ用の乾燥剤は「シリカゲル」という水分を吸着する物質です。
お菓子の箱の中に入っている小さな袋の乾燥剤を思い浮かべる方も多いと思います。

シリカゲルには2種類あり、それぞれ用途が違います。

A型シリカゲル・・・湿度が低い際により水分を吸着し、一度吸着した水分はなかなか離しません。
B型シリカゲル・・・湿度が比較的高い際に水分を吸着し、空気中の水分が少なくなると吸着した水分を放出します。

お菓子などは密閉されたもともと乾燥した空間の中で、湿気らないようとにかく乾燥させておくさせる必要があるので、A型が適しています。

一方「ピアノ用乾燥剤」として使われているのはB型で、湿度が高い時には水分を吸収しますが、
低くなり過ぎないよう吐き出す“調湿効果”があり湿度を一定に保とうとします。
乾燥していればよいというものではないピアノにはB型が適しています。

便宜上「乾燥剤」と呼んでいますが、実はピアノ用のものは「湿度調整剤」なんです。
※紛らわしくなるのでこの記事中では「乾燥剤」という名称で統一します。

必要派vs不要派

調律師のあいだでも乾燥剤は必要なのか?という議論が起こることがあります。
不要派の方の意見としては、「効果が無くお金もかかるし無駄だ」というものが大半です。

確かに乾燥剤の効果というのは目に見えず、入れたときと入れていないときの比較をするのが難しいです。
置き場所やもともとの木に含まれている水分の量やその時の気候など、同じ条件での比較ができないためです。

個人的には乾燥剤は入れる価値があるだけの効果があると考えています。
1年間ピアノに入れておいた乾燥剤を取り出した際には25%ほど重さが増え確実に水分を吸っていますし、
たまたま毎年入れているピアノにある年だけ入れなかった際、1年後明らかに例年より湿気の影響を受けていた経験があります。

乾燥剤.jpg
未開封の乾燥剤(左)と1年間使用したもの(右)の重さを比較。
外袋の重さがあるにも関わらず、使用後のもの方が130gも重くなっています。

なにより、一度新品の乾燥剤の袋を破り中のシリカゲルを触ってみましたが、
手の水分を持っていかれる感覚は恐ろしいほどでした。(手が荒れますので真似しないでください)


ただしたくさん入れれば入れるほど良いかというとそこは疑問で、通常は1個で十分、湿度の高い場所で2個まで。
3個以上は効果があまり変わらない印象です。

ここだけの話、過去には某メーカーが調律師に乾燥剤をとにかくたくさん入れさせ利益を得る、というやり方をしていた時期もあるようです。
ピアノを開けるとペダルも動かないほどその時の乾燥剤がビッシリ!ということもいまだにあります。
その時代に会社から乾燥剤のノルマを言いつけられていたトラウマで、ある種乾燥剤アレルギーになっている調律師も見受けられます・・・

乾燥剤の立ち位置

そもそも乾燥剤は必要か必要でないかで考えるものでは無いと思っています。
乾燥剤は「特効薬」では無く「サプリメント」のようなものです。
乾燥剤を入れたから湿度に関しては絶対に安心、ではなく基本的にはまずは置き場所の環境を整えることが最重要です。
特集:ピアノの温度湿度

その上で、乾燥剤を入れるとよりピアノを良い状態に保つことができます。

「乾燥剤にお金をかけるより湿気で故障が出てから直したほうが安上がり」という意見もありますがこれは絶対に間違いで、
はじめから湿気の影響を受けないようにするのと、影響を受けてから対処するのではピアノへの負担が全く違います。
そもそも故障が出てしまうと直すまで弾かれる方が困りますしね・・・

ピアノへのダメージを減らして少しでも良い状態に、ということを考えるのならば
調律師としては入れることをお勧めするのが誠意だと思います。

IMG_2113.jpg

つかってはいけない乾燥剤

ときどき「みずとりぞうさん」のような、ケースの中に水が溜まるタイプの乾燥剤を使用されている方がいらっしゃいます。
こういった商品は塩化カルシウムが主成分で、ピアノに使用すると弦などをサビさせてしまう危険性があります。
また、何かの拍子に袋が破けた場合、塩化カルシウムをたっぷり含んだ水がピアノ内にこぼれてしまうことになります。
ピアノには水が溜まるタイプの乾燥剤は絶対に使用しないでください。


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