ヘッドフォンで練習ができるようになるサイレント装置とはどういったものなのでしょうか

2018/07/19 掲載
 
ピアノに取り付けるサイレント装置は夢の機械?

 


ピアノの音が出る仕組み、電子ピアノの音の出る仕組み
 
サイレント装置のことを説明する前にアコースティックピアノ(以下“ピアノ”と表記)と電子ピアノ、それぞれの音の出る仕組みを改めてご説明します。
 
まずはピアノの音が出るのに重要な部品は「鍵盤」「ハンマー」「弦」「響板」の4つです。
「鍵盤」を押すと「ハンマー」が前に進み、その先に張られている「弦」を叩きます。叩かれて弦が震えた振動が「響板」に伝わり増幅されて音となり出てきます。
 

〈ピアノの構造を横から表した図〉

 
一方電子ピアノの音が出るための重要な部品は「鍵盤」「センサー」「音源」「スピーカー(ヘッドフォン)」です。
「鍵盤」を押すとその下にある「センサー」が動きを感知し、その信号があらかじめ録音されている対応した「音源」に伝わり「スピーカー(ヘッドフォン)」から鳴ることで音が出ます。
 

〈電子ピアノの構造を横から表した図〉

 
サイレント装置とは
 
ピアノにサイレント機能を追加するにはピアノの中に通常は無い、いくつかの装置を追加します。
それが「消音バー」「センサー」「音源」「ヘッドフォン端子」です。
 
「ハンマー」と「弦」のあいだに「消音バー」という、ハンマーの動きを制限する部品を取り付けます。
消音バーはサイレントOFFのときにはハンマーと接触しない位置にありますが、サイレントONにするとハンマーの動きを止める位置に動き、鍵盤を押してもハンマーが弦の直前で止まるようになります。
ハンマーが弦を叩かないので、これでピアノ自体の音が出なくなります。
 
その状態で弾くと鍵盤の下に設置したセンサーが鍵盤の動きを感知して、録音された「音源」が端子につないだ「ヘッドフォン(またはスピーカー)」から出ます。サイレント装置をONにしたこの状態は、ピアノが電子ピアノと同じ発音方法になった状態です。
 

〈ピアノにサイレント装置を取り付けた構造を横から表した図〉

 
よくサイレント装置を使うと、そのピアノ自体の音がヘッドフォンから出てくるという誤解があるのですが、このようにピアノのサイレント装置というのは、ピアノに電子ピアノを組み込み、いわば「ピアノ」と「電子ピアノ」のハイブリッドにする装置ということになります。
 
サイレント装置の問題点
 
そうなるとサイレント装置はピアノをアップグレードする夢の機械にも感じますが、問題点もあります。
それはピアノに消音バーを追加する都合上、消音バーとハンマーが干渉しないよう、サイレントOFFの状態でも少しタッチの調整を変えないといけないことです。
変えないといけない調整は「レットオフ」という強弱に関わる重要な調整で、
これを変えることによりサイレントを使用していない通常時も強弱が反映されづらい、特にピアニッシモが出しづらい平坦で細い音色になってしまいます。
「サイレント装置を後付けしてもピアノのタッチや音には影響ない」という説明を受けることもあるようですが、実際にはタッチも音もそのピアノの100%の力は出せなくなってしまいます。
 
また、いろいろと部品の点数が増えるため共鳴雑音や不具合などのリスクが増えますし、電子部品であるセンサーや音源部の寿命はだいたい10年くらいと短く、壊れたり古くて使えなくなった場合、無駄に機械がついている状態となってしまいます。
サイレント付きのピアノを売却する際には、取り付け時にピアノに穴をあけることや、電子部品を取り付けていることが査定上マイナスになる傾向があります。
 
※以前は他にも、センサーが鍵盤に接触する物理センサーが多かったため接触音やタッチの違和感がありましたが、最近のモデルでは非接触のセンサーが多いため、その問題は解消しています。
 
まずは電子ピアノのご検討を
 
サイレント装置をご検討される方は多いのですが、ほとんどの方にとっては正直デメリットの方が大きいと思います。
それでも夜間に練習したい、まわりに練習している音をあまり聞かれたくない、というご要望はあります。
その場合はスペースが許せば追加で電子ピアノのご購入がおすすめです。サイレント装置をとりつけるご予算で、十分電子ピアノが買えてしまいます。
 
サイレント装置の音は電子ピアノの音でも、タッチは実際のピアノなので電子ピアノよりはピアノに近い...という主張もありますが、弦を叩いて音が出る、ということありきのピアノの構造ですので、実際はあまりそのメリットはないように感じます。簡単に言えば、出音が電子の音ならばタッチがピアノの構造でもピアノらしさは少ない、ということです。それであればいっそ割り切った電子ピアノのほうが色々な面でデメリットが少ないと思います。
 
どういった方に適しているか
 
サイレント装置のメリットはピアノの中に電子ピアノが入ることですので、スペースは増えずに済みます。
もう1台電子ピアノを置くスペースは難しい、なるべく省スペースで完結させたい、ほとんどの時間サイレントでしか弾けないため電子ピアノよりは少しでもピアノに近いタッチで弾きたいと言う場合など、上記のデメリットと照らし合わせてメリットを感じられるようであれば、サイレント装置の取り付けはありだと思います。
 
当社でもサイレント装置のメーカーと契約し取り付けも行っており、いたずらに批判をしたいわけではないのですが、昔サイレント装置をつけられた方やサイレント付きのピアノをご購入した方など、これらのご説明をすると、知っていればいらなかったかも...というケースがよくありますので、メリット・デメリットを知った上で本当にご自身の環境に最適かをしっかりご検討して活用していただきたいと思います。



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